怠惰

怠惰である自分が嫌いという怠惰を。

WATER(『THE ANYMAL』Suchmos 3rdアルバム)感想

ただの何の知識もないSuchmosファンが抱いた感想です。本当にただの感想。

 

『WATER』

シングルとしても発売されたこの曲。シングルとしての聴こえ方と、アルバムの1曲目としての聴こえ方が全然違って驚いた。

 

まず歌詞を読んでいきます。作詞はYONCE(不穏)。以下、特別な表記がなければ「」内の引用はSuchmos『THE ANYMAL』の『WATER』から。

 

「火星のクレーターでランデブー 流行りのジュピター・ジャズで口説いて」

しょっぱなからわから~~~~ん!!!!!! とりあえず今YONCEは宇宙にいるっぽい。で、女の子とランデブーしているわけですね。

ジュピター・ジャズというのがなんなのかわからなかったので調べると、カウボーイビバップというアニメがヒットした。音楽がすごくかっこいいことは知っているが、あまり詳しくないのでWikipediaを見てみた。

「2071年の火星を中心とした太陽系を舞台に、おんぼろ宇宙船「ビバップ号」に乗って旅する賞金稼ぎのスパイク・スピーゲルら乗組員の活躍を描くSFアニメ作品である。

(中略)

ビバップ』というタイトルどおりジャズを始め、ブルースロックテクノなど多彩なジャンルの音楽をBGMとして使用し、その独特の世界観と相まって既存のSF作品になかった特異なスタイルを築きあげた。」(カウボーイビバップ - Wikipedia

火星を中心に~というのは歌いだしの歌詞と合致している。また、多彩なジャンルの音楽を使用しているという点は、Suchmosそれ自体にも同じことが言えるだろう。今回のアルバムを聴いた後だとなおさらだ。

また、Underground ResistanceというテクノグループがJupiter Jazzという曲を発表している。


Underground Resistance - Jupiter Jazz

ガチガチのテクノ。ここから影響を受けたとは少し考えにくいかもしれない。

 

で、この曲のフックとなる部分。

「Everyone has the water Everywhere anyone has the muddy water」

訳せば、“誰でも水を持っている。どこの誰でも泥水を持っている。”となるわけです。

返せば、誰でも水は持っているが、綺麗な水は持っていない。この前で「乾いた星は歌い足りなくて叫んでる」と歌っている。この星にはそもそもメタファーとしての水が不足しているのだろう。

 

「ハローベイビー 胸に残らない映画を観よう ついでに君を忘れよう So sad, so happy」

ハローということは声をかけているんですね、誰かに。さっきの口説くシーンなのかな。ここの“君”は実際にいる君ではなく彼が思い浮かべている君なんじゃないかな。

とっても悲しくてとっても幸せ。忘れてしまうことは悲しいが、もう君を思い出さない方が幸せ。そういった葛藤を歌っていると受け止められる。

 

「そうだタトゥイーンに行こう いっそ聖地リバプール

タトゥイーンというのはスターウォーズに出てくる架空の星の名前らしい(スター・ウォーズ惑星一覧 - Wikipedia)。で、ここでイギリスのリバプールが出てきて、私たちは日常に帰る。聖地というのはサッカーのことかしら。それともビートルズのことかしら、なんて思ったり。リバプール+宇宙で検索したが、博物館しかヒットしなかった。

 

で、最後。

「Gimme some water Clear water」 “水をくれ、綺麗な水を。”

誰も持っていない、綺麗な水。でもここ切実な感じで歌うのではなく、声もエフェクトがかかっているしヒャッハーみたいな声も聴こえる。無いということが分かっていてこういうことを言っているのかな~どうなんだろう。この後はずっと汚い水のことしか歌っていない。

科学は進歩し、自動航行やなんやらで暮らしは便利になったが、本当に大事なものは汚れてしまって、綺麗なものなんてない。そんなディストピアを彷彿とさせるような歌詞だ。

 

 

次、曲と合わせて聴いてみます。

 

時計の秒針のような音? 規則的によれた音が入り、ピアノとデジピから入る。徐々に近づき、一瞬のブレイクの後ドラム。割と緩やかなテンポ。宇宙を揺蕩っているイメージが湧く。左耳に入るコーラスがいいアクセント。

フックまでは至ってシンプル。フック終了後からピアノが前面に入り立体感というか空間感が生まれていく。ギターが高音で浮遊感を出していく。で、またシンプルなドラムとベースの目立つ感じになっていくわけですね。

ここのトラックが聞き取れな~~~~~い!!!!

二回目のフックもシンプル。だが途中からピアノが割り込んできて倍のビートになっていく。

で、戻ったり浮いたり繰り返して不安定な感じ。ひずんだギターも内面世界というか色々な感情がグニャグニャとしている感じを表しているように聞こえる。声にかかったエフェクトが不思議な感じ。別人が歌っているみたいに聴こえる。

Ah~で一気に宇宙が見えてくる。泣きのギター。一緒に浮かんでいる気分。ピアノソロ。それをバックに叫びが入る。トライアングルの連打。アラームなのかな? 今まで夢の中にいたのかも。で、ここはフェードアウトではなくしっかり終わらせている。

で、静寂。終わったのかな? と思ったらまたイントロと同じフレーズが入る。セリフはフックと同じ内容。タイマー音のようなものがなって遠ざかっていく。そしてI love you。エコーがかかって消えていく。その場で言われているわけではなさそう。忘れたかった君なのかもしれない。

 

なんか正直、元カノを忘れたくてやけ酒した日の夜の夢って感じがする。まあ二日酔いならお水飲みたいよね!

 

 

シングルで聴いたときはあまりピンとこなかったが、アルバムの最初の曲としてのこの曲の役割は何だろうと考えたとき、「自分たちはこのスケール感でやっていくよ!」ってところなのかなあと思った。今まではポップでキャッチ―な(シティポップと評されていましたもんね)Suchmosだったが、今の俺らの流行りはこういうデカい音楽だぜって感じですかね。

 

なんか一曲分感想書いたら文字数がえぐいことになったので、もう個別に記事にしようかな、と思います。

みなさんの感想も教えてください。あ~音楽理論勉強したい。

 

 

 

我儘とディズニーシー

f:id:shinrutyu:20190401223012j:plain

 

ディズニーシーに初めて行ってきた。ディズニーランドに初めて行ったのは去年の4月。元彼(になってしまったなあ)と一緒に行った。

今回のシーは楽しみ半分不安半分だった。一緒に行ったのは親友くんだ。時系列的には告白された後割とすぐ、前回の電話の結構前。先月の中旬に行ってきた。

 

なんで行くことになったかというと、合宿で告白されたとき(男友達からの再告白 - 怠惰)、「ディズニーでリア充ごっこしたくありませんか?」と誘われたからだ。酔っ払いの私は「いいね~したいしたい!」なんて言って、その場で日程まで決めてしまったのだ。あほすぎる。もうこの時点で断るなんていう選択肢はない。人を傷つけることが何よりも怖い私だから。

しかし正直、行くかどうかかなり迷っていた。行ったら楽しいことは保証されているし、ディズニーシー行ったことないし、なにより彼をこれ以上傷つけたくなかったので、私としては行きたいと思っていた。でも、サークルのお兄さまお姉さま方に相談したら皆絶対に行かない方がいい! というものだから、すこし恐怖のようなものが湧いてきてしまっていた。

 

ディズニーシーに行く前日まで委員会のチームの慰安旅行に行っていた(旅行と人生 - 怠惰)。そこでチームのみんなにかいつまんで相談した。みんな、「まあ行ってきなよ、そこまで駒を進めてしまったならもう戻れない。し、君ならきっとうまくやれる」というようなことを言ってくれた。気心の知れた仲間がいてよかったと思った。正しくはないかもしれないが、いつも彼らは背中を押してくれる。

 

 

結論から言うと、ディズニーシー、めっちゃ楽しかった。

 

 

本当に楽しかった。元彼と行ったときよりも数百倍楽しかった。待ち時間も全く苦ではなかった。人は多かったけれどいっぱい乗れた。パレードも見られた。クルーズもできた。

はぐれないように指をつながれた感触とか、つまんだ服の布地の手触り、船上で握られた手のあたたかさや、「非合法かな?」と言われながら駅のホームで繋いだ手の震えを、私は一生忘れられないだろう。

 

 開園から閉園まで楽しみつくしたので、帰りの電車では二人とも立ったまま眠ってしまうくらい疲れていた。最寄り駅に着くともう居酒屋しか開いていない時間だったので、居酒屋に入ってソフトドリンクを一杯ずつ飲み、少しご飯を食べた。

家まで自転車に乗る元気もなく、二人でとぼとぼと歩いた。他愛もない話でゲラゲラ笑いあうこういう時間が好き。

突然彼が声色を変えた。「君に言いたいことがあるんだけど」「え、なになに」「……いや、そのまま言ってもつまらないから、ぼくが何を言わんとしているか考えていただきましょうか」「え、めんどくさい」「まあまあ、面倒くさがらずに」

めんどくせえよ。彼はいつもそうだ、何か大事な、伝えたいことがあると、絶対に相手に考えさせてから本題に入っていく。彼の心が葛藤する時間稼ぎをこっちがしないといけないのだ。そして必ずそのトピックは重たい。だからいつも面倒くさいと思ってしまう。

この状況で、この前告白された相手から言われることなんて、選択肢は3つぐらいしかないだろう。ひとつは恋人になるための告白、もうひとつは友達に戻るための告白撤回、最後のひとつは友達と恋人の狭間でいて、絶対にどちらにも戻れないかつ進めない関係への提案。

 

 でも、そのどれでもなかった。

 

「今夜、一緒にいてくれませんか」

私は混乱した。つまり? そういうことだろうか。曲がりなりにも私に好意がある人と私が一晩一緒に過ごすというのは。

「え、でも、前にも言ったけど、私はいいよ? 全然。行くよ、家。でも君が良くないでしょ、だめでしょ」「あ、いやいや、いいんです。もう恋人になることを目指していないし。僕も君と同じように、今のままの関係がベターじゃないかって、思っています、今は。だから、お酒でも買って一緒に喋って、一緒の布団で眠ってくれませんか。このまま別れて眠るのは、寂しすぎるから」「わかった。でも私の部屋汚い」「そういうと思って、昨日一日かけて片づけたんです、僕の部屋」「さすが親友だ」

 

 彼の部屋にあがって、お酒を飲んだ。二人とも疲れていて、すぐにベロベロになってしまった。またゲラゲラ笑いあった。

 お風呂をお借りして、スキンケアをして、一緒に歯を磨いて、抱き合って寝た。何でもない、”まとも”な日常を取り戻せた気がした。こんな状況で可笑しいけれど。でも、彼がいてくれて本当によかった。

 

彼氏と別れて、もう誰も私のことを好きになってくれないんじゃないか、愛してくれないんじゃないかと思っていた。

愛してくれているかはともかくとして、好きでいてくれる人はいる。気に入ってくれている人はいる。ただただ、嬉しい。生きていていいんだと思う。

でも、どうすれば自分自身を愛してあげられるんだろう。結局このままでは他人から承認を得て喜んでいるだけだ。

本質的に、自分を愛するためには、どうしたらいいんですか。

恋人になる意味

f:id:shinrutyu:20190325144042j:plain

 

「久しぶりに電話しませんか?」彼からラインが来た。久しぶりといっても3日ぶりなんだけど、と。

その日、私は高校の同級生と先輩との飲み会に参加していて、ラインが来たのはその会からの帰り道だった。最寄り駅まで電車で1時間かかるし、そこから車で10分かかるので大分遅くなるが大丈夫かと尋ねると、酔っていてかつ遅い方がいいと言われた。何を言われるんだろうと少し身構えたが、酔っ払いのアタマなので結局なにも浮かばない。

 

帰宅して、寝る支度をして自分の部屋へと階段を上がる。電気を消して、充電器をつないで、電話をかけた。すぐ出た。「お久しぶりです、まあ3日しかたってませんけど」彼は言う。私は笑う。正直毎日ラインをしているので、私の中で久しぶり感はなかった。

酔っぱらっていて何を話したかはあまり覚えていない。借りた本の感想や最近の生活についてとか、色々な話をしたんだと思う。

この電話で、互いの呼び方を変えた。私は少し抵抗していたところがあったが、実利上致し方ない面もあった(だって相手のは変なあだ名なんだもん)ので、互いに下の名前で呼ぶことにした。

 

ふと彼が、「あと2週間か」と口にした。「なにが?」「いや、君に会えるのがですよ」そうか、君は……、私に会いたいと思ってくれていることが素直にうれしかった。「そういえばそうだね、私も会いたいよ」と言うと彼はわざとらしく笑って喜びを表現した。

そして彼はあまりにも、純粋に、私への好意を語るから。私は罪悪感のようなもので苦しくなった。

 

「いつでも離れていっていいんだからね」

考えに考えて、言葉を選んで選んだ結果、この表現をとった。きっとどういう言葉をつかっても、優しい意味にはならない。

少し時間があって、彼は、「罪な人ですね」と言った。言い訳をさせてほしかった。でもできなかった。他の誰かを好きになってくれれば君は幸せになれる。恋人という関係になって大っぴらに交際ができる。私に構わずそういう相手を見つけてほしいと思った。でも、それは、全く本心ではない。全く。

 

なにも解っていなかった。私は大切なことを知らなかった。もう遅い。終わりのない、いや、既に終わってしまった関係の中に私たちはいる。気づかなければよかった。気づいてしまった。

 もう彼との関係に未来はない。永遠もない。なぜ友達でいれば、親友でいれば永遠だと思ったんだろう。そして、永遠を切ったのは他でもない私だ。

私は彼が私から離れていくのを見送ることしかできない。離さないなどという権利はない。あのとき、この選択をした私が、甘かったのだ。

でも、離れていってほしくない。

 

なぜ、みな恋人になるのか。恋人という関係性に身を置くのか。それは、相手を離さない権利を得るためだ。

今更恋人にはなれない。なりたくない。きっと互いが不幸になる。でも、この気持ちは、この離したくないという気持ちはどうしたらいいのだろう。利己的な人間だから、口に、態度に出したくなってしまう。でももうだめだ。そんなことをしてはならないと解ってしまった。大人になってしまった。

 

2週間後、どんな顔をして彼と会えばいいのだろう。

壊れた世界にて

友人から貸してもらった『きみとぼくの壊れた世界』を読んだ。彼からはよく西尾維新作品を貸してもらっている。彼から借りる以前も、ニシオイシン先生の噂はかねがね聞いていたのだけれど、本を読む習慣を失くしてしまっていた私は手が出せていなかった。苦手な中学の同級生がハマっていたからというのもあるが(むしろそちらが大きいか)。

以前にも世界シリーズの他3作と、『クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』、美少年探偵団シリーズ何作かを貸してもらって読んだ。何で早く読まなかったんだろうというか、自分に似ているなんて露ほども思わないけれどどこか同質で、いつも読後感が悪い。それでも次を次をと望んでしまうのはなんなんだろうか。少し人間というものを知れたような気になるからかもしれない。人間離れしているようでいて人間の臭さを凝縮したような小説であると感じるから。

 

で、今回読んだ『きみとぼくの壊れた世界』は、もちろん面白かったし、とても刺さった。読んでいて痛かった。もちろん登場人物と私とが似ているということは、先述した通りない。全くない。それでも自分に重ねてしまう部分というのが確かにあった。

本自体の感想を述べるのは私なんて比べ物にならないほどの感受性豊かな先達がやってくれているので軽くにしておく。ここからは、読む人によってはネタバレともとられかねないので注意されたし。

 

西尾維新の作品を読むとやはり裏切られるというか、負けた感というか、そこが面白いところなんだけれど、そんな感覚がある。作者は一体どういう人生を送ってきて、何をどう考えたらこういう人物を描写できるのか、ただただ疑問だ。化け物だなと思う。

今回かなり頻用されていた「終わりの続き」という表現がやけにしっくりきた。それと同時にまだ何も完結していない自分に安心した。少し救われたかもしれない。

あと個人的に、様刻くんが倫理に別れを告げるシーンは心にくるものがあったし、同時にクるものがあった。5回ぐらい読み直した。

 

まあここからは考えたことだけれど、途中まで私は思い違いをしていて(させられていて?)、様刻くんが世界とのつながりを求めているというか、そのための彼女ちゃんかと思っていたのだけれどそんなことはなく、むしろ逆だったという。

感心しかしないのだけれど、様刻くんはなぜそんなに利他的になれるのか。利他的と言うと少し違うかもしれない。結局最良の選択をしてきたはずの自分が最悪になっていることについて悩んでいる風であったし、自分に結実することを望んでいるのだろうけれど、それでもすごい。

最良の選択をするときにまるっきり自分を度外視する。だからこそ様刻くんはその選択がためらいなくできる。逆に私は、自分の快不快を考えてしまう。だから選ばないということを選んでしまっているのだろう。

そして、世界との繋がりについて。私は誰よりもスキンシップやらセックスやら恋人関係に執着しているのかもしれないなと思った。それがあれば世界と、誰かとつながっていると実感できる。誰かと繋がっていたい、誰よりも愛されたい、誰よりも独占したいのは私なのかもしれない。なぜひとりに絞らないのか。それは簡単で、リスクヘッジのためだろう。そのひとりがいなくなれば私は世界から簡単に消えてしまうから。

 

黒猫さんのような哲学者になりたいと思いつつ、様刻くんのような自己疎外者になりたいと思いつつ、自己中心的な今の私でもいいかもしれないと思った。なにより、普通の人間はグラデーションだから、私の中には黒猫さん的部分や様刻くん的部分、夜月ちゃん的部分がある。と思いたい。

極端な人間に憧れてしまうのも普通の人間の性だろうということで、そろそろ現実の世界に戻ろう。

男友達からの再告白

委員会の合宿、2日目夜の飲み会。

私と親友(男友達からの告白 - 怠惰)は前で出し物をしなければならなかった。飲み会が始まって2人で乾杯し、チューハイを飲んだ。お互いに回しながらふたつの味を楽しんで、それぞれの缶を空けた。ふたりとも緊張しいなのでテンションを上げるために色々なお酒をふたりで飲んだ。

 

出し物の時間がやってきて、その中でもふたりで飲む場面もあったりして、結構彼は酔っ払っていたように見えた。私は前日の飲みすぎで気分が悪くてあまり飲めなかったので、専らソフトドリンクを飲んでいた。

自分達の出し物が終わったあとも彼は飲み続けていた。私は他の人たちの手伝いをしたりなんだりしていて素面に戻ってしまった。

 

全ての出し物が終わって、彼から「ちょっと外に出ませんか」と言われた。かなり気持ち悪そうだったので最寄りのトイレに連れて行こうとしたが空いておらず、地下にあるトイレ付きの大浴場の近くに運んだ。私はもう一度飲み会会場に戻って飲んでいたいろはすを2本持っていくことにした。割と焦っていたので、バレンタインチョコを渡した彼(恋する女とチョコレート - 怠惰)に「なにかあったの?」と訊かれた。「(親友)が酔っ払っちゃったみたい」と返して地下に向かった。

 

地下に戻り、彼をトイレに連れて行った。介抱している間、人生について、自分自身のことについて、色々な話を聞いた。

そうしているうちに、上から階段を下ってくる音が聞こえた。なぜか私たちは廊下から死角になるエレベーターホールに移動して、息を潜めた。今思えば隠れる必要なんてなかったのに。

「もし他の人が今この空間に入ってきたら、ぼくはそいつに何をするかわからない」と言われた。こいつまだ中二病を患っているのかと思いながら、不覚にも可愛いと思ってしまった。「今きゅんとしたでしょ?」とも言われた。さすが親友。

 

「ぼくが今何を言おうとしているかわかりますか?」

彼には本当になんでも相談していて、いわゆる浮気をしてしまったこと(いわゆる浮気という経験 - 怠惰)や、彼氏となぜ別れようと思ったのか、別れた今とてもつらいということも打ち明けていた(突発的破局 - 怠惰)。そして、恋人になってしまえば、身体の関係を持ってしまえば関係性が終わってしまうかもしれないことへの恐怖も告白していた。

その上で、何を言わんとしているか。

わかっていた。でもわからないふりをしなければならなかった。

 

その時、また階段を下ってくる音が聞こえた。今度は近い。きっと地下に降りてくるだろう。

私たちは男湯に隠れた。

 

「どうしよう、ここで一歩踏み出したら終わってしまうかもしれない」彼の口から垂れ流される葛藤に、私は黙っているしかなかった。「背中を押してくれませんか」そんなことできるわけがない。この関係を終わらせたくないのは私も同じで、彼以上に、この関係性に依存している。背中なんて押したくない。

 

「好きです」そう言われた時、私の脳内で何かが弾けた。頭の真ん中から熱いものがあふれだした。この言葉を忌避しながら、待ち望んでいたのだと自覚した。

「でも君はもう恋人は作らないと言った。独占されたくないと言った」「そうだね」「でもぼくはそういう気持ちを持ってしまっている。行きのバスだって隣に座りたかった。サービスエリアでもずっと隣にいたかった。旅行中はずっと君と仕事ができて嬉しかった。昨日の飲み会ではぼくが君を介抱したかった。今日はこうして2人きりでいられて、とても嬉しい。どうしたらいいんですか、ぼくは」

純然たる独占欲を突きつけられて、困惑と快感に襲われた。

「いいんですか、ぼくとこんな暗がりに2人でいて。襲われるとか考えなかったんですか」「考えないよ、だって親友じゃん」「そう思われているのはありがたいけど、わかりませんよ」「襲ってもいいけど、傷つくのは君の方だよ」

 

「私は独占されたくない。君が私のことを好きであればあるほど、独占したさからそういう行為をしてしまったら、傷つくのは君だよ。前にも話したように、私はみんな好きだから、そういう行為はできるよ、なんなら今だって君に触れたいよ。我慢しているよ。でも君が望んでいるのはそうじゃないでしょう?君だけの私になるためのイニシエーションとしての、セックスでしょう?

私は君との関係が壊れるのが嫌だよ。ずっとそばに置いておきたい。ずるいからね」

 

すると、浴場のドアが開いた。幸いにも私たちはドアからは見えない位置にいたのでそのまま息を殺した。さすがに、この状況を見られるのはまずすぎる。一歩でも足を踏み入れられたら見つけられてしまう恐怖に震えた。互いの手を握り合いながら人がいなくなるのを待った。

 

人がいなくなった後、時計を見ると4時になっていた。そんなに話し込んでいたのかと2人で驚いた。それと同時に携帯が圏外であることに気づいた。そうだ、ここは地下だった。

用もないのに男湯に入るということは、私たちを捜索しに来たのかもしれない。心なしか上からばたついた足音が聞こえた。

「もう、潮時ですかね。上に出ましょう」「そうだね、行こうか」「ちょっと待った、最後に」不意にキスされた。また頭の中で何かが弾けた。

 

地上に出るとやはり探されていたようで、どこに行っていたのか問い詰められた。中には泣いている人や、外に探しに出てしまった人もいて罪悪感に強く苛まれた。適当に誤魔化し、その場は収まった。2人とも寝室に搬送され、その日はそのまま寝た。

 

その日から今日まで色々あったが、とりあえずここまで。

関係性が壊れるかもしれないのに一歩踏み出す覚悟は、今の私にはない。その弱さが今後の人生にどう影響するのか、考えたくもない。

旅行と人生

草津に行ってきた。委員会のチームでの慰安旅行。今は東京から自宅に帰る高速バスの中で酔いそうになりながらこの文を書いている。

 

やっぱりこのチームのメンバーが好きだ。来てくれた人たちが特にというのも(リーダー失格だとは思うが)ある。ただ歩いて湯畑に行ってぶらぶら散策するのも楽しかった。露天風呂に入って穏やかな顔を突き合わせるのも楽しかった。スマブラでボコボコにしあうのも楽しかった。後輩が作ってくれた感謝ムービーをみんなで観るのも楽しかった。お酒を飲んで悲しい話をしつつゲラゲラ笑い合ったのも楽しかった。

 

前日まで旅行へのモチベがゼロだった。というのも旅行前日は所属サークルの演奏会があり、打ち上げがあったので朝寝坊するのはほぼ確実かのように思われた(しなかった)。

しかもこのタイミングで膀胱炎になってしまった。腎仙散を飲んで少し落ち着いたが、とても萎えた。痛い。

 

まあ旅行でよくあることだが、終わってみたら楽しかったなあという気持ちしか残らない。後輩同士も仲良くなっていてよかった。仲が良ければ大体なんとかなる、というかリーダーの負担は減る。経験上。

 

これで委員会のイベントはすべて終わり。寂しい。濃い2年間だった。つらいこともたくさんあった。誰にも言えない悲しいこともたくさんあった。でもそれ以上に楽しかった。私は本当に周りに恵まれている。

 

自宅に帰ったら明日着る服を急いで洗濯しなければならない。なんてったって明日は人生初のディズニーシーに行くのだ。何が何でも行く。

明日で人生がどう変わってしまうのかはわからないけれど、きっと終わってみれば楽しい人生だったと思えるだろう。だから何をしても良い。自分がしたいようにする。

 

まだ破局を反芻できるほど強くはないけれど、人生を進めていかなければならない。

見る前に跳べ。

突発的破局

2/25夜中に別れました。

もう少しで1年4か月だった。

 

別れを切り出した時は、もう一緒にいられないし、価値観もあわないし、楽しさのピークは過ぎてしまったし、他の恋も経験してみたいと思って別れた。数か月前から割と考えた上での判断だった。

なのに今はすごくつらい。こんなにショックを受けると思わなかった。何で別れてしまったんだろう、もう少し一緒にいたかった、別れたくなかったと思う自分がいる。失ってはじめてわかる君の大切さみたいな、手垢でべたついた表現はなるべくして手垢でべたついているのだと思った。

 

別れ話を終えて彼が私の部屋から出て行ったあと、かねてから相談していた男友達(男友達からの告白 - 怠惰)にAM2時ごろ、「別れた」とラインすると、秒で返ってきた。何もする気になれなくてこれまでのことを回想していたら、「別れたくなかった」という気持ちが波のように私に襲い掛かってきて、泣きじゃくって過呼吸になった。泣くとすぐ過呼吸になる体質なのでいつもは自分で治せるのだが、今回は本当に死ぬかもしれないと思うほど酷かった。AM4時ごろ、「これでいいんだ」「これでいいのか」という葛藤が渦を巻いてまた私を襲った。耐え切れず男友達にラインしてしまった。誰かにぶつけて楽になりたかった。

その後も全く眠れず、関ジャムをみていた(内容は全く覚えていない)ら、AM5時ごろ、東京の先輩(いわゆる浮気という経験 - 怠惰)から電話がかかってきた。タイミングが良すぎる。言うか迷ったが、別れたことを話した。「1か月たったらこれでよかったのかしくじったのかわかるよ」と言われた。確かにそうかもしれないと少し落ち着いた。時間がたってみないとわからない。

この先輩との件もまたいろいろあったので別の記事にします。

先輩との電話が終わってAM6時ごろ、男友達からラインがかかってきてそこから7時まで電話した。だいぶ落ち着いた。

AM9時から用事があったので出席した。何かしている間は忘れられる。10時に用事が終わって寝ようと思ったが1時間ほどしか寝られず、ご飯も食べられず、ひたすらYoutubeを観ていた。星野源の良さを知った。これも記事にしようかな。

PM5時にアルバイトの面接をSkypeで行った。普通の面接よりもやりづらかった。その後に高校の親友に別れたと報告した。すぐに電話がかかってきて少ししゃべった。すごく励ましてくれた。「別れなかった方が良かったって思うのはただ寂しいだけだと思うよ、いろんな人とおいしいご飯食べてきな」と言われた。そうしようと思う。

幸いにもこれから人と会う予定がぎっちり詰まっている。今日はこれからサークルの同期会だし、明日はコンサートに行く。1日は友達と飲むし、2日はサークルの演奏会のリハーサルがあってその後に飲み会。3~5日はサークルの合宿。6日はアルバイトの体験入社。7日は後輩への差し入れしにおでかけ。8日は友達と飲む。9日は演奏会本番。10・11日は委員会の慰安旅行。13日はサークルの追いコンで15日から実家に帰省する。考えている暇なんてない。

 

別れてから今日まで、持つべきものは友達だと痛切に感じた。救われている。彼氏と別れて、私と出かけてくれたりご飯を食べたりしてくれる人がいなくなってしまったと思ったけれどそうではなかった。男友達にも「君の周りにはいい人間ばかりだね」と言われた。本当に感謝している。

きっとこの経験も私の人生を彩る一部分になるだろう。今までありがとう。さようなら。