怠惰

怠惰である自分が嫌いという怠惰を。

終わりかけの紅葉

恋人として初めて彼とデートをした。

 

前日夜から私の自宅に来てくれて、料理を一緒に作ってお酒を飲みながら食べ、W杯を観戦しながらいろいろな話をした。他愛もなくて、思い出そうとすると思い出せないような話、でも記憶の底には残っているような話をいくつもした。

来年から勤務地が東京になりそうだと話すとすごく喜んでくれた。互いの距離が物理的にだいぶ近くなる。休みが合わず月イチで会えるか会えないかで寂しいね、という話を先日していたので、休みも合うようになり会う頻度も増やせそうなのがうれしい。この遠距離に終わりが見えたことに安堵した。

 

はじめてのセックスは最後までできなかった。でもそれすらも愛おしかった。年単位で久しぶりに愛情の伴う性行為をしたのだけれど、こんなに気持ちよくてこんなに幸せなものだったっけと思った。ぜったいにこの手を離してはいけないなと思った。

抱き合って眠るのが息苦しくなかった。彼の匂いに包まれて安心した。この人がいれば生きていけると思った。ようやく人間に戻れた心地がした。

 

朝起きておしゃべりしたりいちゃいちゃしていたりしたらいつの間にかお昼になっていた。近所の洋食屋さんに行ってランチをした。店主さんが気さくな方でアットホームな雰囲気がよかった。名物料理がとてもおいしかったので、今度また行ってみようと思う。

そのまま牧場までドライブをした。はじめて手をつないで一緒に歩いた。ああ、私はいま彼と付き合っているのだと改めて実感する。併設されている神社の境内に生えていたモミジが紅葉していてきれいだった。おみやげとソフトクリームを買って一緒に食べた。感動するくらいおいしかった。

そのあとは紅葉を見に山の方へ移動した。もうほとんど落葉していて少し寒々しかったが、久々に自然の中で深呼吸をしてリフレッシュできた。

 

帰宅し2時間ほど昼寝をして、またおしゃべりした。将来的には一緒に暮らしたいねという話になって、先を見据えてくれているのがうれしかった。ただ同棲の際は親御さんにご挨拶が必要らしく今すでに少し緊張している。気が早い。帰省したときに彼女がいることをお知らせするようだ。それまでには文化的な生活を営める人間になっていたい。

来月末まで会わない予定だったのだが来週また会えることになり、みくのしんカレーを作って一緒に食べる約束をした。かなりうれしい。

帰ってほしくなさすぎてかなり引き留めてしまったことを反省している。別れ際、寂しすぎて泣いてしまって困らせてしまった。こんな重い女でもかわいいと思ってほしい。

 

空白の数年があり、縁あって恋人としてまた一緒に日々を過ごせるのがうれしい。もう二度と手放してはならないと彼を抱きしめながら何度もそう思った。彼も私も大人になった状態で再会できてよかった。もしあのとき彼と付き合う選択をしていたら......と今までの私は思っていたけれど、きっと今のタイミングで出会いなおすのが最良なのだろう。